必ずしも艇番通りのスタートにならないのが競艇の大きな特徴の一つになる。スタート前の「コース取り争い」それが進入だ。ピットアウトから小回り防止Vを回り、ホームストレッジに出てコースを確定させる。コースは「早い者勝ち」となり、一早くピットアウトした選手は好きなコースを取りやすく、逆に遅い選手は不利なコースに回されることになる。とは言っても、ピットアウトが互角であったならば、艇番の若い順にコース取りは有利になる。
一昔前はベテラン選手が幅を利かせてイン(内枠)を独占していたが、現代競艇ではそんなことはない。若手だろうがB1級だろうが皆平等にコース取りを争う。ただ、デビューしたばかりの新人選手は安全上の配慮もあり大外(6コース)となるのが常である。
1号艇から順に有利になる進入だが、外よりの艇番はハナから勝負にならいのかと言えば、そうではない。選択肢は2つある。「助走距離を目いっぱい取る」と「前付けに出る」だ。
進入時の2つの選択肢
助走距離を目いっぱい取る
停止状態からスリットへ向けて加速していく競艇、コース問わずどの艇も「助走距離を長く取りたい」のは当然だ。2コースの艇は1コースよりも、3コースの艇は2コースよりも助走距離を取ろうとする。外枠の艇は早々と1コースはおろか2、3コースといった内寄りのコースを諦めて「助走距離を目いっぱい取ることに専念」する。艇を後ろに引くことで競艇場によっては200M以上に助走距離を取ることが可能になってくるのだ。艇を後ろに引いてのスタートを「ダッスタート」、艇を後ろに引くことなく早々とコースを確定させてのスタートを「スロースタート」と言う。だったら全艇がダッシュスタートを選択すれば、助走距離をたくさんと取れるのでは?と思われるかもしれないが、「進入のルール」上そうはならないのである。ゆっくりとコースを取ろうとしたり、早々とダッシュを選び後ろに艇を引いてしまうと、内側にどんどんと入られて、たちまち外コースに追いやられてしまうのである。 現代の競艇では8割方、「スロー3、ダッシュ3」の隊形に落ちつく。このとき、ダッシュ艇の最内コースのことを「カド」と言う。3対3の隊形なら4コースがカドということになる。このカドは、ダッシュ艇の中では最も有利なコースになる。助走距離を目いっぱい取る艇の中では一番内よりのコースということになるのだから当然と言えば当然である。
前付けに出る
コースを取るのは早いもの勝ち。この基本ルールを利用して、どの艇よりも早く2マークを回ってホームストレッチに飛びだして早々とコースを確定させてしまうのである。小回り防止Vを回っても減速せず、2マークを大きく回り込んでホームストレッチに出て一気にコースを確定させる、これが前付けである。できるだけ内よりのコース、時には1コースすらも奪取してしまう前付けだが、「助走距離が極端に短くなってしまう」というリスクもある。80Mを切ってのしまうケースだって起こりえるのだ。こうなってしまうと1コースを取ったとしても明らかに不利となってしまう。当然だが、前付けを内寄りの艇がミスミス許すことはしない、ブロックするために、小回り防止Vを回って減速したあと再加速したりする。熾烈なコースの奪い合い、前付け艇がいたときの進入はエキサイティングなものとなる。
進入予想は、スタート展示が多いに参考になる。本番レースで選手がどのコースを取りたいのかを表明する。進入のシュミレーションをするわけだから、これを見れば、かなりの部分が明らかになる。とは言っても、スタート展示で入ったコースに必ずしも本番で入らなければならない訳ではない。ルール上は、展示2コース、本番3コース、展示ダッシュ4コース、本番前付けで1コースでもまったく構わないのだ。ただ実際には、展示と本番での並びが大きく替わることはなく、123/456が→123/564となる程度。展示が多いに参考になるレースがほとんどだ。